「子どもや孫にお金を渡しておけば相続税が減る」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。これが生前贈与です。
生前贈与は、相続税対策の中でも今すぐ始められる数少ない方法です。ただし、やり方を間違えると効果がなかったり、思わぬ税金がかかったりすることもあります。
この記事では、難しい言葉は使わずに「生前贈与ってどういうこと?」「どの非課税枠が使える?」「何に気をつければいい?」を順番にお伝えします。
生前贈与とは?まず基本を押さえましょう
生前贈与とは、生きているうちに子どもや孫などに財産を渡すことです。
相続は亡くなった後に財産が移りますが、生前贈与は生きているうちに財産を移します。財産を生前に移しておけば、亡くなったときに残っている相続財産が減り、相続税が少なくなるという仕組みです。
生前贈与の基本的な流れ
① 親(祖父母)が子(孫)にお金・不動産などを渡す
② 贈与を受けた人は「贈与税」を申告・納付する(非課税枠以内なら不要)
③ 亡くなったときの相続財産が減り、相続税が軽くなる

たとえば、毎年子ども2人に100万円ずつ(合計200万円)を10年間贈与すると、合計2,000万円が非課税で移転できます。その分、相続財産が減るので相続税も軽くなります。
使える!3つの非課税枠

① 暦年贈与(年110万円まで非課税)
贈与税には「基礎控除」として1年間に110万円まで非課税というルールがあります。受け取る人1人あたり110万円なので、子どもが2人いれば合計220万円まで毎年贈与税なしで渡せます。
たとえばこんな使い方
子ども2人に毎年110万円ずつ贈与 → 年間220万円、10年間で2,200万円を非課税で移転できます。これだけで相続税を数百万円減らせる可能性があります。
② 教育資金の一括贈与(最大1,500万円)
30歳未満の子・孫への教育資金として、最大1,500万円まで贈与税がかかりません。学校への授業料・入学金は1,500万円まで、塾・習い事などは500万円まで対象です。
金融機関に専用口座を開設して、そこから教育費を支出する形で使います。2026年3月まで延長されていますが、期限の確認をおすすめします。
③ 住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円)
子・孫がマイホームを買う・建てるための資金として贈与する場合、省エネ住宅なら1,000万円まで非課税になります(その他の住宅は500万円まで)。
贈与を受けた年に住宅を購入・建築することが条件です。子どもや孫がちょうど家を買うタイミングがあれば、うまく活用できます。
暦年贈与の早見表
「毎年いくら贈与すれば何年でいくら移せるか」をまとめました。

1人あたり年額 | 子2人への年間合計 | 10年間の合計 | 贈与税 |
|---|---|---|---|
50万円 | 100万円 | 1,000万円 | なし |
100万円 | 200万円 | 2,000万円 | なし |
110万円 | 220万円 | 2,200万円 | なし(最も効率的) |
150万円 | 300万円 | 3,000万円 | 超過40万円×税率(約4万円/人) |
110万円ちょうどが「贈与税ゼロで最も多く移転できる」という意味で最も効率的です。
やってはいけないこと・注意点

注意①:名義だけの贈与はNG
子どもや孫の名前で口座を作ってお金を入れても、親が通帳や印鑑を管理していれば「名義預金」とみなされます。この場合、贈与したつもりでも相続税の対象になってしまいます。
本当の贈与にするには、受け取った人が自分で管理・使用できる状態にすることが大切です。
注意②:毎年まったく同じ金額・日付の贈与は要注意
「毎年1月1日に110万円ずつ10年間」のように、金額・時期が完全に同じだと「最初から1,100万円を贈与する約束をしていた(定期贈与)」とみなされ、まとめて贈与税がかかる場合があります。
対策として、金額や時期を年ごとに少し変えること、そして毎年贈与契約書を作成することをおすすめします。
注意③:2024年の改正で「持ち戻し期間」が変わりました
亡くなる前の一定期間の贈与は、相続財産に戻されます(持ち戻し)。この期間が2024年から3年→7年に延長されました。
改正のポイントをかんたんに言うと
以前:亡くなる前3年以内の贈与が相続財産に加算
2024年以降:亡くなる前7年以内の贈与が相続財産に加算
(ただし4〜7年前分は100万円を差し引いて計算)
つまり、早めに贈与を始めることがより重要になりました。
注意④:相続時精算課税制度との選択
贈与には「暦年贈与」のほかに「相続時精算課税制度」という方法もあります。2024年の改正でこちらにも年110万円の基礎控除が新設され、使いやすくなりました。どちらが有利かは状況によって異なるため、専門家への相談をおすすめします。
「とりあえずやっておこう」は危険!
生前贈与は正しく行えば有効な節税策ですが、やり方を誤ると「贈与したつもりが相続財産に戻される」「定期贈与とみなされ贈与税がかかる」といったケースがあります。始める前に一度専門家に相談することをおすすめします。
生前贈与は「早く始めるほど効果が大きい」
生前贈与の最大のポイントは時間です。毎年110万円の贈与でも、10年続ければ1,100万円、20年続ければ2,200万円(子1人あたり)が非課税で移転できます。
50代から始めれば十分な時間があります。「相続税なんてまだ先の話」と思わずに、早めに動くことが大切です。
まとめ
- 生前贈与は生きているうちに財産を移して相続税を減らす方法
- 毎年110万円までは贈与税なしで贈れる(暦年贈与)
- 教育資金・住宅資金には大きな非課税枠がある
- 名義預金・定期贈与は税務署に否認されるリスクがある
- 2024年改正で持ち戻し期間が3年→7年に延長。早めに始めることが重要
- 始める前に専門家に相談して正しい方法で行うことが大切
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