「遺言書を残しておきたいが、何から始めればよいかわからない」「自分で書いた遺言書は有効なのか不安」——遺言書について、こうした疑問を持つ方は多くいらっしゃいます。
遺言書は、自分の財産を誰にどのように遺すかを法的に定める重要な文書です。適切に作成されていれば遺産分割協議なしに財産を引き継ぐことができ、相続トラブルの予防にもなります。
本記事では、遺言書の3つの種類・有効要件・作成フロー・相続税との関係を図解でわかりやすく解説します。
遺言書とは
遺言書とは、自分の死後に財産をどのように分けるかなどを定めた法的文書です。民法に定められた方式に従って作成された遺言書は法的効力を持ち、法定相続分よりも優先されます。
遺言書がある場合、原則として遺産分割協議を行わずに遺言書の内容に従って財産を分けることができます。ただし、相続人には「遺留分」という最低限の相続権があり、遺言書でも完全には無視できません。
遺言書の3種類と比較

種類 | 作成方法 | 費用 | 証人 | 家裁の検認 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|---|
自筆証書遺言 | 全文・日付・氏名を自書+押印 | ほぼ無料 | 不要 | 必要(法務局保管は不要) | ★★☆ |
公正証書遺言 | 公証人が作成・証人2名が立会 | 数万円〜 | 2名必要 | 不要 | ★★★ |
秘密証書遺言 | 本人が作成・封印し公証役場で認証 | 数万円〜 | 2名必要 | 必要 | ★☆☆ |
① 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、費用をかけずに手軽に作成できるのが最大のメリットです。一方で、書き方に不備があると無効になるリスクがあります。

有効要件(4つすべて必要)
- 全文を自書(手書き)すること——パソコン入力・代筆は無効。ただし2019年の法改正により、財産目録のみパソコン作成が認められています
- 作成年月日を記載すること——「〇年〇月吉日」は無効。具体的な日付が必須です
- 氏名を自書すること——戸籍上の氏名が望ましい
- 押印すること——実印が望ましいですが、認印・拇印も有効です
⚠ 訂正方法にも厳格なルールがあります
訂正する場合は、訂正箇所に二重線を引き、欄外に「〇行目〇字削除〇字加入」と記載し、訂正箇所に押印する必要があります。修正テープや修正液の使用は無効になります。
法務局での保管制度(2020年7月〜)
2020年7月から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けることができるようになりました。法務局に保管された遺言書は家庭裁判所の検認が不要になり、紛失・改ざんのリスクも防げます。手数料は3,900円です。
② 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が関与するため法的効力が最も確実です。原本は公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がなく、家庭裁判所の検認も不要です。相続トラブルを防ぎたい方、財産が多い方に特におすすめです。

証人になれない人
- 未成年者
- 推定相続人(配偶者・子・父母など)
- 受遺者(遺言書で財産をもらう人)とその配偶者・直系血族
- 公証人の配偶者・直系血族・兄弟姉妹など
💡 証人が見つからない場合
弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に証人を依頼することができます(別途費用が発生します)。遺言書作成を専門家に依頼する場合は、証人の手配もセットで対応してもらえることが多いです。
③ 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしたまま、その存在だけを公証役場で認証してもらう方式です。パソコンで作成した遺言書でも使えますが、家庭裁判所の検認が必要で手間がかかるため、実務ではほとんど利用されていません。
遺言書で指定できること・できないこと

遺言書で指定できる主な事項
- 誰に何の財産を遺すか(相続分の指定・特定財産の遺贈)
- 遺産分割方法の指定
- 遺言執行者の指定
- 認知(婚外子の認知)
- 祭祀主宰者(お墓の管理者)の指定
遺留分に注意
遺言書があっても、相続人には「遺留分」という最低限の相続権があります。遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使して金銭で取り戻すことができます。
遺留分の割合
配偶者・子:法定相続分の1/2
父母(直系尊属のみが相続人の場合):法定相続分の1/3
兄弟姉妹:遺留分なし
遺言書と相続税の関係
遺言書の内容は、相続税の税額にも影響します。
遺言書の内容 | 相続税への影響 |
|---|---|
配偶者に自宅を相続させる | 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例が使いやすくなる |
遺言執行者を指定する | 遺産分割協議が不要になり10ヶ月の期限内に申告しやすくなる |
遺留分を侵害する内容 | 遺留分侵害額請求が発生すると税務上の処理が複雑になる |
相続人以外への遺贈 | 2割加算(相続税額の20%増)が適用される場合がある |
💡 節税効果を最大化するには遺言書の内容を専門家と確認
誰にどの財産を遺すかによって、配偶者控除・小規模宅地等の特例・二次相続への影響など、相続税の税額が大きく変わります。遺言書を作成する前に、税理士・不動産鑑定士に相談することをおすすめします。
まとめ
- 遺言書には自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類がある
- 最も確実なのは公正証書遺言(検認不要・原本保管・改ざん不可)
- 自筆証書遺言は4要件すべてを満たさないと無効になる
- 自筆証書遺言は法務局への保管で検認が不要になる(手数料3,900円)
- 遺言書でも遺留分は侵害できない
- 遺言書の内容は相続税の税額に直結するため専門家への相談が重要
遺言書は「書けばいい」ではなく、誰に何を遺すかの内容設計が相続税対策の観点からも非常に重要です。特に不動産が含まれる場合は、鑑定評価と合わせた税額シミュレーションをもとに遺言内容を検討することをおすすめします。
「遺言書の内容を相続税の観点からアドバイスしてほしい」「不動産の評価を踏まえた遺言設計をしたい」という方は、初回相談無料でお気軽にご相談ください。